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ドパミン神経系の調節は,口腔病変を伴う慢性疼痛に効果を示す可能性がある

  • 長嶺敬彦
  • 2017年1月21日
  • 読了時間: 2分

遷延化する口腔の疼痛は、摂食量の低下から栄養問題を惹起します。そして患者のQOLを著しく低下させる厄介な病態です。慢性疼痛を伴う地図状舌にドパミンD2遮断薬であるスルピリドが効果を示す可能性を、東京医科歯科大学歯科心身医学教室の篠原先生が報告しています[1]。地図状舌は灰白色の辺縁で縁取られた赤斑が不規則に広がる口腔粘膜疾患です。IL-6やTNF-αなどのサイトカインが関連するとの報告もありますが、詳細は分かっていません。本症例でスルピリドが効果を示したメカニズムは、局所作用としてドパミンD2遮断での粘膜血流増加や上皮再生機能が考えられます。 しかしもっとも興味がある点は、スルピリドの中枢性の抑うつ効果では説明困難な慢性疼痛の改善効果です。ドパミン神経系を調節することで慢性疼痛が改善する可能性を示していると思うのです。慢性疼痛時には腹側被蓋野でのβエンドルフィン神経のμオピオイド受容体の細胞内陥入(機能低下)が起こっているはずです。また側坐核ではオピオイド受容体の内因性リガンドであるダイノルフィンが遊離しドパミン遊離抑制が行われているはずです。つまりGABA神経系とドパミン神経系のバランスが、非疼痛時とは異なる関係になっていると予測されます。スルピリドはシナプス後膜のドパミンD2受容体遮断作用だけでなく、シナプス前のドパミン自己受容体にも作用します。スルピリドが慢性疼痛時のドパミン神経系とGABA系のバランスを改善したのではないでしょうか。ドパミン神経系を調整すると、慢性疼痛時の神経伝達が改善する可能性を、この論文は示しており、貴重な報告と思います。なお、篠原先生はこの報告で、博慈会老人病研究所の優秀症例報告論文賞を受賞しておられます。[http://www.hakujikai.or.jp/pdf/rouken/pdf20160606.pdf#zoom=100] [論文1] 篠原 優貴子,長嶺 敬彦,豊福 明.スルピリドが有効であった慢性疼痛を伴う地図状舌の1例.未病と抗老化Vol.25:50-54, 2016.

[RB3. Regulating central dopamine neurotransmissions may be effective for chronic pain with geographic tongue.]

 
 
 

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