致死的な悪性症候群(Life-threatening Neuroleptic Malignant Syndrome )の病態
悪性症候群は、ドパミン拮抗薬(一般的には抗精神病薬)への曝露に関連する、まれで特異な病態である。病態は完全には解明されておらず、横紋筋融解症から急性腎障害や多臓器不全に進行する症例がある。致死的に至る症例は、横紋筋融解症の合併とともにカルシウム代謝の障害が起こっている可能性...
神経血管圧迫が疼痛を惹起するメカニズム
古典的三叉神経痛(TN)は、三叉神経の主に神経根入口部における明瞭な神経血管圧迫(NVC)によって引き起こされる顔面痛疾患である。血管圧迫は、中枢と末梢のミエリン鞘の移行部で局所的な脱髄を誘発し、異所性インパルスを引き起こす可能性があるため、顔面痛発作が誘発される。脱髄が圧...
血糖の軽度低下は抗精神病薬の効果を予測する―心身相関を分子メカニズムレベルで考えようー
脳は司令塔で、身体機能を制御するスーパーコンピューターに例えられる。しかし本質的な中枢は存在しない。脳機能の1つの表現型である精神機能は、身体機能と密接に関連する。この心身相関は、実臨床での精神機能の変化の予測因子として利用できないだろうか。...
舌痛症の2段階仮説
原因不明の口腔顔面領域の慢性疼痛である舌痛症の有病率は1.73%と推定されており、決して稀な疾患ではない。しかしその病態は解明されていない。カプサイシンが舌痛症の病態にどのように関連するか、仮説を提唱してみた。 興味あることに、舌痛症を発症するのは、閉経前後の女性が圧倒的に...
向精神薬によるセロトニン過剰に注意
SSRI、SNRIなどのセロトニン再取り込みを阻害する向精神薬は、うつ病の治療で汎用されている。SNRIは慢性疼痛にも適応が拡大され、日常診療でこれらのセロトニンを増加させる薬が汎用されている。 高齢者ではセロトニンの過剰な神経伝達はさまざまな副作用を惹起する。低Na血症な...
コロナと悪性症候群
COVID-19のパンデミックで、救急医療は困難を極めています。救急医としての私たちの使命は、常に社会的弱者を支援することです。救急医療を行う際には、身体的症状と心理的症状の両方を考慮する必要があります。 コロナ下では、さまざまな病態に注意が必要で、コロナに類似するコロナ以...
ベンゾジアゼピン受容体作動薬を内服している高齢者は手術時にせん妄を高率に起こす
ベンゾジアゼピン作動薬は睡眠薬としてわが国で汎用されています。「非ベンゾ」という分類がありますが、これは誤解を受けやすいです。ベンゾジアゼピン骨格をもたないベンゾジアゼピン受容体作動薬で、薬の薬理作用による違いではありません。非ベンゾのゾルピデムは術後せん妄を起こしやすいで...
非定型抗精神病薬による非定型糖尿病の分子メカニズム
非定型抗精神病薬により1型でも2型でもない糖尿病を発症することがあります。発症形式は1型糖尿病に類似します(インスリンの絶対的不足である糖尿病性ケトアシドーシスで発症する)が、1型特有の自己抗体を認めません(1)。非定型抗精神病薬への暴露は糖尿病性ケトアシドーシスの発症リス...
統合失調症ドパミン仮説の限界:クルタミン酸やノルアドレナリンが病態に関連する
統合失調症の病態仮説として、中脳辺縁系のドパミン神経伝達の過剰と皮質系のドパミン神経伝達の低下が言われています。そもそも現在市販されているすべての抗精神病薬はこのドパミン仮説に基づくドパミン遮断薬です。ドパミン仮説は精神薬理学の仮説の中でもっとも息の長いものの一つです。...
感染・免疫は、精神疾患の病態形成と深くかかわる
もう20年以上前になるのですが、精神科関連のある学会で講演をする機会をいただきました。抗精神病薬の身体合併症を研究していて、慢性の便秘などを臨床的に検討する中で、腸内細菌のよる日和見感染であるbacterial translocationの話をしました。そして「精神疾患の原...