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リチウムは血中濃度だけでなく,心電図をモニタリングする必要がある

リチウムは日本うつ病学会の双極性障害診療ガイドラインで、躁病エピソードだけでなく、うつ病エピソードや維持期の治療でも推奨されています。しかし下痢、嘔吐、振戦、線維束攣縮、多飲・多尿、眩暈、頭痛、発語障害、運動失調、昏迷甲状腺機能低下、不整脈とさまざまな副作用に注意が必要です。治療域と中毒域が近いので、血中濃度のモニタリングはリチウム中毒を予防するために必須です。

リチウムがどのようなメカニズムで抗躁効果を示すのかは、はっきりとは分かっていません。しかし副作用は、リチウムが一価の陽イオンであることを理解すれば分かりやすいです。リチウムはリチウム塩として摂取され、体内に吸収されると一価の陽イオン(Li+)として全身に分布します。ナトリウムも一価の陽イオンですので、リチウムの挙動に影響を与えると同時に影響を受けます。利尿薬やアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)はナトリウムの排泄を促します。腎臓でナトリウムの排泄が行われるとき、リチウムの排泄は遅延します。ARB併用でのリチウム中毒は大きな問題です。そしてそのリスクは女性で高い傾向があります。なぜなら電解質代謝に影響を与える酵素発現に性差があるからです[1]。この論文は下記アドレスを入力すればネットで全文読めます。[https://www.jstage.jst.go.jp/article/cnpt/4/0/4_23/_pdf]

また高齢でのリチウム中毒は心毒性が現れやすく、著しい徐脈からAdam-Stokes症候群を起こしやすいです[2]。さらに厄介なことに、リチウムによる徐脈はリチウムの暴露が短期間でも、そして治療域でも起こります[3]。心臓の活動電流が発生するには内向きのナトリウム電流が重要ですが、心筋にリチウムイオンが存在するとそれが妨げられる可能性があります。ですからリチウムでの治療には心電図モニターは欠かせません。リチウムは刺激伝導系にも作用し、徐脈を起こしやすいです。下記の論文のconclusionである”When prescribing lithium, clinicians should regularly monitor their patients’ ECG and serum lithium levels to prevent serious or fatal complications.”は臨床では重要な指摘です。下記アドレスでネットで全文読めます。

[http://innovationscns.com/sinus-node-dysfunction-after-acute-lithium-treatment-at-therapeutic-levels/]

文献

  1. Nagamine T. Lithium Intoxication Associated with Angiotensin II Type 1 Receptor Blockers in Women. Clin Neuropsychopharmacol Ther. 2013;4:23-5.

  2. Nagamine T, Yonezawa H, Nakamura K, Takahashi T, Terazono T. Adam-Stokes Syndrome Caused by Lithium Intoxication. Int Med J.2015;22(4):343-4.

  3. Nakamura M, Nakatsu K, Nagamine T. Sinus node dysfunction after acute lithium treatment at therapeutic levels. Innov Clin Neurosci.2015;12(11-12):18-20.

[RB8. It is necessary to monitor an electrocardiogram as well as blood concentration in order to prevent cardiac adverse events of the lithium carbonate.]

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