前頭葉機能の不思議;記憶の「確かさ」のメタ認知は行動選択に重要である
- 長嶺敬彦
- 2017年2月27日
- 読了時間: 2分
サルは自分の記憶の「確かさ」をもとに賭けにでるようです。東京大学の宮下研究室(大脳生理学)からの報告です[1]。サルに車やかごなど4つのイラストを見せ、そのあとに提示するイラストが前に見た4つの中に含まれていたかどうかをテストします(記憶テスト)。記憶テストの成績をもとに、2つの報酬系を用意します。ピンク色と黄緑色の2種類の選択肢を画面に表示し、サルがピンクを選択すると、記憶テストが正解であれば多めのジュースがもらえ不正解だと何ももらえません。サルが黄緑を選べば、記憶テストの成績にかかわらず少量のジュースがもらえます。賭けであるピンクを選ぶときは記憶テストの正解率が7割と高かったのです。それに対して安全策である報酬が少しだけもらえる黄緑を選ぶときは記憶テストの正解率は5割しかありませんでした。サルは自分が正しい答えを知っているとメタ認知したとき勝負に出たことになりますね。この記憶の確かさをもとに行動するとき、fMRIで前頭葉の一部が非常に活発に活動していました。
私もリサーチブログ1で示しましたように、統合失調症患者さんの金銭の自己管理能力と前頭前野の情動抑制機能についてストループ課題を用いて研究しました。金銭を計画的に使用できない患者さんは、ストループ干渉率は高くないのに逆ストループ干渉率が高いことが分かりました。この結果から、金銭を計画的に使用するには前頭葉の特定の部位の機能が必要であると推測されました。この論文は、本日、Int Med J.にアクセプトされました[2]。お金を計画的に使う能力も前頭葉のメタ認知機能が関連していると思います。
文献
[1] Miyamoto, K., Osada, T., Setsuie, R., Takeda, M., Tamura, K., Adachi, Y., and Miyashita, Y. Causal neural network of metamemory for retrospection in primates. Science, 355, 188-193, 2017.
[2] Nagamine T. The Reverse-Stroop Test Predicts Self-Discipline of the Money of Schizophrenia Patients. Int Med J.in press.
[RB10. Frontal cortex is activated when making a bet based on metamemorys]
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