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抗精神病薬による誤嚥性肺炎・窒息に性差が存在する可能性;その分子メカニズムは?

  • 長嶺敬彦
  • 2017年4月20日
  • 読了時間: 2分

高齢精神障害患者に抗精神病薬を投与する場合、嚥下反射・咳嗽反射の低下から誤嚥性肺炎や窒息に注意する必要があります。咳受容体を構成するC線維上にあるカプサイシン受容体が刺激されると、サブスタンスPが遊離され咳嗽反射が起こります。サブスタンスPは迷走神経や舌咽神経の知覚枝頚部神経節で合成されC線維にプールされますが、サブスタンスPの合成は基底核領域のドパミン神経で調節されています。基底核領域のドパミン濃度が低下するとサブスタンスP合成が低下し、嚥下反射・咳嗽反射が低下します。抗精神病薬でドパミンを遮断するとサブスタンスP合成が低下し、嚥下反射・咳嗽反射が低下する危険性があります。ドパミンを強固に遮断する定型抗精神病薬の方が非定型抗精神病薬よりサブスタンスP濃度は低下し、嚥下反射が低下します[1]。嚥下反射が低下している患者で、遅発性ジスキネジアなどの運動障害を併発している場合は窒息のリスクが生じます。動物モデルではドパミン遮断を強固に繰り返すと喉頭の運動障害を誘発します。正確な統計はないのですが、抗精神病薬による窒息や誤嚥性肺炎は、男性が多いという印象があります[2]。健常人でのカプサイシンを用いた咳嗽誘発でも男性より女性が咳嗽反射を誘発しやすいことが分かっています。

カプサイシン受容体は、環境変化を感知するセンサータンパク質であるTRP(Transient Receptor Potential)チャネルのサブグループであるバニロイド受容体サブタイプ1(TRPV1)です。TRPV1の発現には動物モデルでは性差が存在する可能性が指摘されています。侵害刺激に対する動物実験では、後根神経節(dorsal root ganglion)でエストロゲン受容体を介してTRPV1発現が制御されていました[3]。また末梢神経レベルではプロラクチン受容体を介してTRPV1発現が制御されていました[4]。このようにTRPV1発現に性差が認められることから、嚥下反射・咳嗽反射では性差が存在する可能性があります。男性患者や性ホルモンが低下する高齢女性患者ではTRPV1の発現低下を介して、抗精神病薬による誤嚥性肺炎のリスクが高くなる可能性が考えられます。

文献

[1]Nagamine T. Serum substance P levels in patients with chronic schizophrenia treated with typical or atypical antipsychotics. Neuropsychiatr Dis Treat. 4:289-294, 2008.

[2]Nagamine T. Choking risk among psychiatric inpatients. Neuropsychiatr Dis Treat.7:381-382, 2011.

[3]Cho T, Chaban VV. Expression of P2X3 and TRPV1 receptors in primary sensory neurons from estrogen receptors-α and estrogen receptor-β knockout mice. Neuroreport. 23:530-534, 2012.

[4]Patil MJ, Ruparel SB, Henry MA et al. Prolactin regulates TRPV1, TRPA1, and TRPM8 in sensory neurons in a sex-dependent manner: Contribution of prolactin receptor to inflammatory pain. Am J Physiol Endocrinol Metab. 305(9):E1154-1164, 2013.

[RB16. Sex differences exist in antipsychotic-related aspiration pneumonia and choking; TRPV1 expressions in a sex-dependent manner?]

 
 
 

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