top of page
検索

トレースアミン(TA)と統合失調症

  • 長嶺敬彦
  • 2017年5月2日
  • 読了時間: 2分

トレースアミン(trance amines;TA)とは生体内にごく微量存在し、モノアミンの機能調節に関わる分子です。β-フェニルエチルアミン、チラミン、トリプタミンなどがあります。TAを合成する細胞をD細胞といい、ラット中枢神経系において報告され、尾側から吻側へ向かって、D1(脊髄)~D14(分界条床核)と命名されています。なおD細胞のDはドパミンではなく、 脱炭酸酵素(decarboxylase)のDを意味しています。アミンはアミノ酸から脱カルボキシ反応により作られます。ですからTAを産生する細胞は脱炭酸酵素を有しているのでD細胞と言われます。アミンといえば、カテコーラミン、セロトニン、ヒスタミンなどが有名ですが、これらのアミンは産生量が非常に多いのでTAとは言いません。

統合失調症の死後脳研究で、側坐核におけるD細胞の脱落が示されており、統合失調症とTAの関与が推定されています[1]。TAが作用する受容体の中で、TA関連受容体1型(TAAR1)はドパミン神経伝達と関連します。側坐核D細胞の減少によりTAAR1シグナルが低下し、中脳辺縁系のドパミン過活動が惹起されたというのが、統合失調症のD細胞仮説です。TAAR1ノックアウトマウスは、統合失調症と同じようにprepulse inhibitionの障害がみられ、線条体D2受容体のポストシナプスでの過感受性を形成します[2]。TAAR1は創薬のターゲット分子であり、そのリガンドは錐体外路症状と体重増加をきたさない新規抗精神病薬として期待されています[3]。しかしTAAR1のリガンドにはMDMA、LSDなど幻覚を引き起こす物質もあります。TAAR1をターゲットとした創薬は、統合失調症、うつ病、不安障害、双極性障害、注意欠陥多動障害、パーキンソン病、てんかん、片頭痛で検討されていますが、TAAR1に作用するリガンドは従来の抗精神病薬より分子量もかなり小さく、TAAR1以外への作用も十分検討しておかなければなりません。

文献

[1]Ikemoto K. Striatal D-neurons: in new viewpoints for neuropsychiatric research using post-mortem brains. Fukushima J Med Sci. 2008 Jun;54(1):1-3.

[2]Espinoza S, Ghisi V, Emanuele M et al. Postsynaptic D2 dopamine receptor supersensitivity in the striatum of mice lacking TAAR1. Neuropharmacology. 2015 Jun;93:308-13.

[3]Revel FG, Moreau JL, Pouzet B et al. A new perspective for schizophrenia: TAAR1 agonists reveal antipsychotic- and antidepressant-like activity, improve cognition and control body weight. Mol Psychiatry. 2013;18(5):543-56.

[RB18. Trace amine-associated receptor 1 (TAAR1) is a new target for treating schizophrenia.]

 
 
 

最新記事

すべて表示
致死的な悪性症候群(Life-threatening Neuroleptic Malignant Syndrome )の病態

悪性症候群は、ドパミン拮抗薬(一般的には抗精神病薬)への曝露に関連する、まれで特異な病態である。病態は完全には解明されておらず、横紋筋融解症から急性腎障害や多臓器不全に進行する症例がある。致死的に至る症例は、横紋筋融解症の合併とともにカルシウム代謝の障害が起こっている可能性...

 
 
 
神経血管圧迫が疼痛を惹起するメカニズム

古典的三叉神経痛(TN)は、三叉神経の主に神経根入口部における明瞭な神経血管圧迫(NVC)によって引き起こされる顔面痛疾患である。血管圧迫は、中枢と末梢のミエリン鞘の移行部で局所的な脱髄を誘発し、異所性インパルスを引き起こす可能性があるため、顔面痛発作が誘発される。脱髄が圧...

 
 
 

Strong Empathy & Brain Science & Reciprocal Fairness (SBR)

  • Facebook Clean Grey
  • Twitter Clean Grey
  • LinkedIn Clean Grey

© 1999 by T.N. Neuroscience Research 

bottom of page