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神経血管圧迫が疼痛を惹起するメカニズム

古典的三叉神経痛(TN)は、三叉神経の主に神経根入口部における明瞭な神経血管圧迫(NVC)によって引き起こされる顔面痛疾患である。血管圧迫は、中枢と末梢のミエリン鞘の移行部で局所的な脱髄を誘発し、異所性インパルスを引き起こす可能性があるため、顔面痛発作が誘発される。脱髄が圧迫圧によって引き起こされることを考えると、静脈圧迫は動脈圧迫よりも症状が軽く、手術によって改善しやすいはずである。しかし、マイクロサージャリーによる痛みの改善は、動脈圧迫の方が良好で、静脈圧迫では改善率が低い。高解像度T2画像を用いた術前MR血管造影法を用いて圧迫血管のタイプを検討した研究でも、静脈圧迫は手術による改善率がよくない。原因不明の口腔顔面痛の一部でもNVCを有しており、その病態生理に影響を及ぼしている。NVCがある口腔顔面痛の患者は、治療抵抗性が高く、神経障害を起こしている可能性が高い。静脈性NVCが治療抵抗性の慢性疼痛を引き起こす機序は解明されていない。1つの可能性として、睡眠障害とそれに伴う静脈漏出での神経の変性である。睡眠障害と慢性疼痛は双方向で影響する。睡眠障害はglympathic systemの低下で脳の老廃物処理の効率を低下させ、その一部が静脈から漏れ出て神経障害を引き起こすことが考えられる。静脈性NVCを有する患者で、血管漏出を制御するアクアポリン4(AQP4)チャネルの遺伝子多型を調べる必要がある。

(文献)Nagamine T. Venous Neurovascular Compression and Chronic Orofacial Pain. World Neurosurg.2023;176:242.

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