ストループ現象と抑制系-マシュマロ・テストに合格するには
皮質の抑制系の機能を検査する方法としてStroop課題を用いて研究を行っています。ストループ現象とは文字の「意味」と文字の「色」という二つの情報が異なる場合に干渉を起こすことで、1935年に心理学者ジョン・ストループによって報告されたことから、この名前がつきました。たとえば...
GABAの二相性制御を利用した高プロラクチン血症の新たな治療方法
プロラクチンは主に漏斗下垂体系のドパミン神経系(tuberoinfundibular dopaminergic system; TIDA系)で制御(分泌抑制)されています。抗精神病薬はドパミンを遮断するのでTIDA系が遮断され、高プロラクチン血症を惹起します。現在、抗精神病...
気分と血圧調節で共通する分子標的は?
降圧薬の投与が気分障害による入院と関連するか、イギリスの大規模二次医療施設を受診した患者のデータベースを用いて検討されました。降圧薬は、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(renin-angiotensin system blocker;RASB)、β遮断薬(beta...
神経回路の発達にはプロラクチン暴露が必要
抗精神病薬を投与されていない発症直後の統合失調症患者は、性年齢をマッチさせた対照群と比べて有意にプロラクチン値が高いことが指摘されています[1]。プロラクチン値に影響を与える甲状腺機能やコルチゾールレベルを調整しても、若年の初発統合失調症患者は対照群に比べてプロラクチン値が...
遅発性ジスキネジア治療薬としてのVMAT2阻害薬
抗精神病薬でドパミンD2受容体を長期間にわたり強固に遮断すると、顎、唇、舌、四肢などに不随意運動が惹起されます。遅発性ジスキネジア(tardive dyskinesia;TD)と呼ばれる病態です。TDは無意識的な反復的不随運動で、とても辛いものです。TDには有効な治療方法が...
トレースアミン(TA)と統合失調症
トレースアミン(trance amines;TA)とは生体内にごく微量存在し、モノアミンの機能調節に関わる分子です。β-フェニルエチルアミン、チラミン、トリプタミンなどがあります。TAを合成する細胞をD細胞といい、ラット中枢神経系において報告され、尾側から吻側へ向かって、D...
抗菌作用は精神症状を変化させる?;2つの事象から
消化管で惹起される分子生物学的変化は精神機能に影響します。われわれは腸内細菌叢が変化することで精神症状が改善する現象を臨床で経験してきました。そのメカニズムは不明ですが、消化管での分子生物学的変化が腸管のバリアを通って血流や神経を介して脳に伝わることが推測されます。...
抗精神病薬による誤嚥性肺炎・窒息に性差が存在する可能性;その分子メカニズムは?
高齢精神障害患者に抗精神病薬を投与する場合、嚥下反射・咳嗽反射の低下から誤嚥性肺炎や窒息に注意する必要があります。咳受容体を構成するC線維上にあるカプサイシン受容体が刺激されると、サブスタンスPが遊離され咳嗽反射が起こります。サブスタンスPは迷走神経や舌咽神経の知覚枝頚部神...
エブセレンは双極性障害の治療薬になりえるか?
双極性障害の治療薬としてリチウム(Li)はゆるぎない地位を保っています。そもそもLiが双極性障害にどうして効果を示すのかは完全には解明されていません。Liは、単純な陽イオンであり、酵素活性に必要なMgと拮抗することでその活性を変化させるからと考えられます。抗躁効果の標的酵素...
認知症治療薬の限界
認知症の患者数は人口の高齢化に伴って急増しており、わが国では2013年で462万人(厚生労働省研究班調べ)と、65歳以上 の高齢者の15%を占めています。認知症の病態は完全には解明されていませんが、病態として海馬の委縮が重要です。認知機能検査のMini Mental...