抗精神病薬による重篤な低血糖発作; counter-regulatory systemの不具合は抗精神病薬の種類で異なる
非定型抗精神病薬は代謝障害を惹起するリスクがあり、臨床では血糖上昇が大きな問題です[1]。そのメカニズムはインスリン抵抗性だけでなく、小胞体ストレス応答でのPERK経路での不具合も示唆されています[2]。一方で、抗精神病薬は興味あることに低血糖を誘発する危険性が報告されてい...
細菌により腸管のバリア機能が変化すると精神機能も変化する?
便秘などの消化管機能障害を有する統合失調症患者さんにプロバイオティクスを投与したところ、思いもよらず精神症状が改善することがあります[1]。稀な現象ですが、精神症状が改善した症例には次のような特徴がありました。プロバイオティクス投与前の状況として、腸内細菌叢の乱れ(dysb...
「共感」と「互恵的平等」の起源;乳児にすでにその原型が存在する
三光舎(SBR)の3つの光は、共感(Strong empathy)、脳科学(Brain science)、互恵的平等(Reciprocal fairness)です(ABOUT US参照)。私は、脳科学をもとに共感と互恵的平等の神経回路が身体機能に与えるメリットを探索していま...
前頭葉機能の不思議;記憶の「確かさ」のメタ認知は行動選択に重要である
サルは自分の記憶の「確かさ」をもとに賭けにでるようです。東京大学の宮下研究室(大脳生理学)からの報告です[1]。サルに車やかごなど4つのイラストを見せ、そのあとに提示するイラストが前に見た4つの中に含まれていたかどうかをテストします(記憶テスト)。記憶テストの成績をもとに、...
抗精神病薬による慢性便秘に新たなメカニズム;排便に下行性疼痛抑制系の「ドパミンD2様受容体」が関与する
精神科薬物療法で患者さんが不快に思うことに、「肥満」とともに「便秘」は必ず上位にランクされます[1]。もちろん慢性便秘は自覚的な不快感だけでなく、まれに敗血症(bacterial translocation)や腹部コンパートメント症候群(abdominal...
リチウムは血中濃度だけでなく,心電図をモニタリングする必要がある
リチウムは日本うつ病学会の双極性障害診療ガイドラインで、躁病エピソードだけでなく、うつ病エピソードや維持期の治療でも推奨されています。しかし下痢、嘔吐、振戦、線維束攣縮、多飲・多尿、眩暈、頭痛、発語障害、運動失調、昏迷甲状腺機能低下、不整脈とさまざまな副作用に注意が必要です...
熱力学第2法則からみたカルニチン欠乏
熱力学第2法則を簡単に言うと、「熱はあついものから冷たいものへ移動し、その逆は成立しない」ということです。エントロピー増大の法則で説明されます。エントロピーは、ドイツの理論物理学者であるクラウジウス(Clausius)が導入した概念で、エネルギーの 「en...
バルプロ酸とカルニチン欠乏
カルニチンは1905年肉エキスから単離されたベタイン構造有するビタミン様物質です。ビタミン様物質というのは、ヒトでは微量ですが、リジンから生合成されるからです。カルニチンの語源はラテン語の「肉」で、主に骨格筋や心筋に分布し、エネルギー代謝に必須の物質です。脂肪酸のβ酸化はヒ...
「プラセボ効果」をさまざまな側面から研究しよう
プラセボ効果は「気のせい」ではありません。薬が使われるとき、薬に付加的に加わった性質(たとえば、色、ブランド、投与する人の権威など)が意味を形成し、脳内に変化が起こるのです。ですから、意味応答(meaning response)の一つです[1]。たとえばPET(positr...
ケタミンの抗うつ効果;うつ病はセロトニン仮説から脱却できるのか?
麻酔薬であるケタミン(ketamine)の抗うつ効果が注目されています。SSRIなどのセロトニンを増やすうつ病の薬物療法は、効果が発現するまで2~4週間もかかります。動物モデルですが、ケタミンの抗うつ効果は速効性があり、なおかつ投与を中止しても予防効果があります[1]。私は...